協会誌巻頭言

当協会について

新年のご挨拶

公益社団法人熊本県精神科協会 会長 相澤明憲

熊本県精神科協会会員の皆さん,新年あけましておめでとうございます。

この数年間,我々の生活に重大な影響を与えてきた新型コロナ感染症が,5月に5類感染症に変更されました。この病気が消えてしまったわけでもなく,感染予防対策は続けていかなければならないのですが,それでもようやく感染症流行前の普通の生活に近づいてきました。それまで避けざるを得なかった直接の対話がかなりできるようになりました。そうしたときに,人どうしが近しくふれ合うことのありがたさをあらためて感じた人も多かったのではないかと思います。 

令和5年度の熊精協の総会において役員の改選が行われ,新たに3人の先生が理事に就任されました。菊池病院の山下先生には公的病院の立場から,平成病院の本田先生には県南の病院の代表として,菊陽病院の橋本先生には協会初めての女性理事として就任いただいたということではありますが,それぞれのみなさんはそのような枠を超えて大いに活躍されるものと期待しています。また益城病院の犬飼先生,八代更生病院の宮本先生の両副会長が退任されました。犬飼先生は協会の精神科救急対応事業の中心を担ってこられました。また熊本地震後はご自身の被災経験をもとに災害対応体制について積極的に提言をしていただきました。宮本先生は熊本県医師会の理事との二足の草鞋を履いていただき,協会と県医師会との情報共有のかなめ役を果たしてこられました。お二人の力なしには,熊本地震とそれに続く新型コロナ流行という困難な状況を協会が無事に運営することは困難であったと考えます。あらためてお礼を申し上げます。副会長の後任にはくまもと心療病院の荒木先生,阿蘇やまなみ病院の高森先生が就任されました。お二人とも知識経験とも豊富であり,協会の屋台骨をしっかり支えてくださると思っています。

10月に第12回の日本精神科医学会学術大会を熊本城ホールで開催しました。精神科医学会としては4年ぶりの本格的な開催となり,全国から多くのみなさんが参加されました。熊本県の会員病院からもたくさんの参加があり,我々が期待していた以上の盛会であったと感じています。講演にせよ,シンポジウム,演題発表ににせよ,そこにはリモート参加では得られないものがありました。全国から参加した皆さんからも,大会運営やおもてなしについて大いに満足したとたくさんおほめの言葉をいただきました。実行委員長の荒木先生,副実行委員長の高森先生,実務を担った島川事務局長をはじめとする協会事務局のみなさん,それに運営を委託したコンベンションリンケージの担当者のみなさん,そして熊精協会員のみなさんなど多くの方々に支えられて大会を成功裡に終えることができました。感謝の意にたえません。

11月には4年ぶりにくませいフェスタを催しました。Eスポーツを利用するという今までとは全く違う取り組みでしたが,協会員がみんなで一つのことに取り組むという開催の基本は従来通りのものでした。今後もいろいろ新しいことに取り組むことになるのでしょうが,この基本は揺るがないものでありたいと思います。

令和4年12月には元会長の松本郁郎先生が逝去されました。いかなるところにおいても周囲を睥睨されていた貫禄あるお姿を拝見することはかなわなくなってしましました。

令和5年8月に元会員の堀田宣之先生が逝去されました。先生が山中や谷川に行かれたときのことを飄々と話されていたお姿が忘れられません。

令和5年12月には元会員の東家暁先生が逝去されました。ご高齢になられても常に矍鑠としておられ,我々に対してもっとしっかりせよと..咤激励しておられました。

協会にとって多くの功績を残された先輩方を失うことは寂しい限りです。ご冥福をお祈りいたします。

一方慶事として本年10月山鹿回生病院の元院長森山茂先生が精神保健福祉事業厚労で厚生労働大臣表彰を受けられました。先生の受賞は協会の誇りとするところであり,心からお喜び申し上げます。

この数年は世界中を巻きこむ大事件が頻繁に起きており,本年令和6年がどのような年になるのか想像もできません。精神科医療においては,長期入院患者の地域移行や精神科救急医療体制の充実などはひき続き大きな課題です。初診予約待ち期間の長期化も大きな問題となりつつあります。自殺対策,依存症対応,小児思春期精神科医療等々精神科医療に対する社会からの期待は年々大きくなるばかりですが,制度上もまた予算の上でも対応が困難な課題ばかりです。医療 DX導入が図られようとしていますが,それをどのように運用していくかも大きな課題となるでしょう。日本の経済は長年の停滞を脱しそうだと言われるようですが,それは人件費や資材価格の上昇を伴うものとなり,保険医療費という固定された価格で運営している医療界では経営の困難が大きくなるかもしれません。

今までも大きな困難は何度もありましたが,先輩の方々は創意工夫とお互いの協力を力としてそれらをのりこえられました。我々もそれを見習っていかなければなりません。

令和6年も熊精協へのご支援とご協力をお願いいたします。また,本年が会員のみなさんにとって良い年であるよう祈念いたします。

 

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