協会誌巻頭言

当協会について

新年のご挨拶

公益社団法人熊本県精神科協会 会長 相澤明憲

熊本県精神科協会の会員の皆さん。あけましておめでとうございます。とはいうもの,年末から急に寒さが厳しくなり,新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。「めでたさも 中くらいなり おらが春」という一茶の句が思い浮かびます。

昨年は,新型コロナに明け暮れた年でした。外国での流行やクルーズ船内の蔓延までは,どこか他人事のような気がしていましたが,それから日本中に感染が広がるまでそう時間がかからなかったのはご承知のとおりです。

新型コロナウイルス感染症,いわゆるCOVID19の流行の結果,私たちの日常生活は大きく変わりました。マスクは必携品となり,どこへ行っても消毒薬が置いてあります。人が集まるイベントは極力省かれるようになり,必要な会議はリモートで行うことが主流になりました。不要不急(?)の食事会,飲み会は自粛せざるを得なくなりました。だれもが不安で窮屈な生活を強いられています。

熊本県精神科協会の活動も当然ながら,大きな影響を受けました。3月の院長会が中止になり,5月に予定していた協会の総会が延期になりました。例年6月に開催するくませいフェスタはやむなく中止しました。7月には何とか総会,院長会を開催しましたが,その後も流行の程度を勘案しながらリモートを利用するなどして四苦八苦しています。毎月の理事会もリモート開催が基本になりつつあります。今年の10月に新しい熊本城ホールで開催する予定であった九州精神神経学会,九州精神医療学会の熊本大会が延期になってしまいました。1年以上前から準備を重ねていたのですから本当に残念なことでした。

精神科病院は,その構造上また制度上,感染防護について不利な条件が多いと言えます。したがって,院内に新型コロナウイルスが入り込まないようにする対策が強く求められます。しかし無症状の感染者が多いことや症状発現の前から感染させうることなど,この感染症を一切入れないようにすることは非常に困難と言えるでしょう。病気についての情報は大量に提供されていますが,その情報が多すぎて,かえってどうしていいのかわからないという状況になっているようです。一方で,精神科医療に対する地域の要請は常に存在しています。ウイルスを恐れて精神疾患の治療をなおざりにしたのでは,それこそまさに医療崩壊です。医療活動継続の必要性と新型コロナウイルス防護対策の板挟み状態です。

11月,会員病院である阿蘇やまなみ病院で感染のクラスターが発生しました。どうなるのだろう,1日も早くクラスターがおさまればよいが,と祈るばかりでした。しかし阿蘇やまなみ病院では,院長先生を先頭に皆さんが結束し,極めて前向きに感染症に立ち向かわれました。その様子は病院のホームページに逐一発表され,その積極的な取り組みには,外でみている私たちの方が勇気づけられる思いでした。明確な言葉にはなりませんが,私たちが向かうべき方向が示されたような気がします。

今年にはワクチンが導入される見込みですし,治療薬も普及するでしょう。今年中かどうかはわかりませんが,そう遠くない時期に病気の流行自体はある程度沈静化すると思われます。しかし,この感染症の社会全体への影響は甚大で,そのことによる不安,悲観,混乱が疾病の直接の症状以上の被害をもたらすのではないかという危惧を持ちます。今後の地域のメンタルヘルスにもたらす影響は計り知れません。失業率の上昇は必至でありそれが自殺者増をもたらし,高齢者の地域での孤立が認知症リスクを高めます。その他さまざまな問題が噴出してくるでしょう。我々精神科協会が果たすべき課題が大きくなるのは,これからであるに違いありません。

今,一年で一番寒い時期を迎えていますが,秋に葉を落とした樹々の枝の先では,小さなつぼみが少しずつふくらみ,春に美しく咲く準備をしています。同様に,私たちの生活も現在の厳しい状況の先には,今までに増して明るく活気のある将来が待っていると思います。

令和3年が,皆さんにとって明るい年であるよう祈念いたします。本年も,熊精協へのお力添えをお願いいたします。

 

 

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