協会誌巻頭言

当協会について

新型コロナの行方

公益社団法人熊本県精神科協会 理事 濵元純一

この記事が出るころは,コロナについて何かの区切りがついていることを願いたいです。

こころの医療センターでも2020年7月28日からコロナの患者さんを引き受けることになりました。最初は,不安と妙な高揚感と緊張感で肩に力が入っていました。1クールが終わると,やるべきこともわかり,最近は,気が緩みがちです。

最初のうちは,高齢の患者さんが入院しても,それほど症状もなく退院していくのを見ると,かかってもいいかなと思いました。しかし,報告される後遺症の大変さで考えが変わりました。調査報告の報道や記事をみていると,後遺症の発現頻度にバイアスがかかっているように感じます。

2021年は当院の入院患者数は,1月,4~5月,8~9月の3つのピークがありました。この時期は,重症化する人が多く,呼吸器の先生の指示で抗ウイルス薬やステロイドをかなり使いました。デルタの時は重症化していましたので,致死率の高い変異株が出てくるとしたらと考えるとワクチンを早く打ちたいと思いました。その後,感染者数が減って,年末に多くの中学校で関西方面へ修学旅行に行き楽しかったという子どもたちの声を聞くと,「このままで!」と思いました。2022年は年始から入院が続き,あまりにも多くの人がかかるので,オミクロンで具合が悪くなるのではなく,もともとの持病がオミクロンのため適切な手当てやケアがされないために悪くなるようです。当院でも,院内で初めて死者が出ましたが,オミクロンによるものではありませんでした。

二つの疑問があります。一つは,どこかでは終息する時があり,今では思ってもみないような,それでいて筋の通った理由があるのではないかということです。人の遺伝子もウイルスの遺伝子も変異し続けます。それは天変地異を含む多彩な環境の変化を「種」として確率的に生き延びるためでしょう。子どもが野菜を嫌いなのは栄養の面からみると好き嫌いはだめということになりそうですが,進化的な考え方だと植物は食べられることを想定に入れていて,かといって食べつくされても困りますから,食べ過ぎると具合が悪くなる毒をもっているとのことです。野生の動物が食べるものの種類を変える理由だそうです。つわりはその時期に器官形成にとって悪影響のある可能性のある食物を食べないためで,緑色の野菜はその可能性が高く,子どもは代謝能力が低いために避けるのだそうです。渡りをする鳥類の中には,目の中に地磁気を色に変える仕組み,それは量子のもつれを利用しているようですが,一体そんなことがよく仕組みとして組み込んであるなと思います。鳥は知らないで生きているのでしょうから,人間もそうなのでしょう。ウイルスの終息をお膳立てする仕組みは、第5波の自然消滅的な一休みの理由が明らかになると一歩進むのかもしれません。

二つ目は,理性は持っていても,感情で行動する不思議です。「進化心理学」的な視点から見ると,生得的な理性と,科学的な理性は時に学習として矛盾を生じさせ,人の中に混乱を呼び起こします。コロナよりも温暖化が大きな問題なのに,コロナでは航空機は止まりますが,温暖化では今のままなら絶対に止まらなかったでしょう。自身の生命に関する危険信号は理屈を超えて直感的に作動し、石器時代の脳を持った人間はそれに従うしかないようです。

 

 

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