協会誌巻頭言

当協会について

コンサルテーション・リエゾン精神医学を経験して感じる事

公益社団法人熊本県精神科協会 理事 寺岡 和廣

熊精協会誌の巻頭言の執筆依頼がありました。 どんな内容でも構いませんと言うお話でしたがな かなか考えが浮かばず,やっと執筆した日が, “敬老の日”でした。

私は平成元年に熊本大学精神科に入局し精神科 医として30年になりますが,最近高齢者の診察が 多くなった気がします。総務省が9月16日に発表 した人口推計(15日時点)によると,70歳以上が 前 年 か ら100万 人 増 の2618万 人 で, 総 人 口 の 20.7%を占め,国民の5人に1人に相当する割合 を初めて超えています。高齢者(65歳以上)は 44万人増の3557万人で過去最多を更新し,そのう ち女性が2012万人と2千万人台に達し,男性の 1545万人を大きく上回っています。70歳以上の 20%超えは団塊の世代(1947年〜49年生まれ)が 2017年から70歳を迎え始めたことが影響している そうです。近年の診断技術の開発,治療技術の進 歩から,様々な身体疾患が治療可能な疾患と捉え られるようになっており,高齢者だけではなく, 精神科への相談が益々増えて行くと考えます。そ こで私が今まで経験し,更に今後も精神科医とし て学んで行きたい事を執筆する事にしました。

私は平成3年から一年間東京へ勉強に行きまし た。その時にコンサルテーション・リエゾン精神 医学を専門とする東海大学の岩崎徹也教授に色々 な事を教えて頂きました。コンサルテーション (Consultation)とは,相談・助言と言う事で, “他科の医師が患者の精神的問題を発見し,その 要請でいわば外部にいる精神科医が相談にのる形 態”の事です。リエゾン(Liaison)とは,連絡・ 連携と言う事で,“最初から他科の医師と精神科 医とが共同して病棟診療にあたっていて,いわば 内部にいる精神科医自身が問題を発見し治療にあ たる形態”の事です。要するに,コンサルテー シ ョ ン・ リ エ ゾ ン 精 神 医 学(Consultation – Liaison Psychiatry)とは“他の診療科と協力し て患者の診療にあたる精神科の領域の事”です。 相談内容は色々なものがありますが,例えば, “大声を出して騒ぐ,ウロウロと徘徊する等のせ ん妄状態”,“治療を受けているのに全然症状が良 くならないので気分が沈み,死にたくなる等のう つ状態”,“癌と診断されて治療を行っているが, 不安が強くてどうしたら良いのかわからない等と 訴える緩和ケア”等があげられます。精神科医へ 紹介される際には,1)患者が見捨てられたとい う感覚を持たないように注意,2)問題を具体的 に取り上げながら,その問題を専門家に相談して みることを勧める,3)問題が解決した後に患者 の希望がある場合には,再度治療を引き受けるこ とを伝える,4)それでも患者が精神科受診を頑 なに拒否するなら,病状を家族に説明して受診を 説得してもらうことも考える等が重要ですと他科 の医師には伝えています。

精神疾患に罹患している患者様達は自分の人生を 考えると本当に辛いかも知れません。しかし一度 しかない人生を後悔しないように,少しでもお役 に立てればと考えています。これからも私が精神 科医として頑張って行く為には,精神科以外の医 師をはじめ,患者様やその御家族等,多くの方々 の支えが必要だと考えています。私も来年はいよ いよ60歳を迎えます。人生の最後を笑顔で迎えら れる事を目標と考えているので,今後も引き続き 皆様に支えていただければと思っております。

 

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