協会誌巻頭言

当協会について

時代の流れに

公益社団法人熊本県精神科協会 理事 横田周三

熊精協会誌は今回で第180号となり,昭和49年から,平成の時代を書き留め,“令和”の元号に なって初めての発刊となりました。令和の時代での熊精協の大きな行事の1つとして,来年2020年, つまり令和2年に桜町の熊本城ホール(今年12月オープン予定)で九州精神神経学会・九州精神医療学会の開催が予定されています。現在,竹林会長,相澤会長の両会長の元,各協会関係の委員会の方々にお世話になりながら,昨年から準備が開始されています。また,時期が近づいてくると協会の皆様方にも具体的なお願い事をしていく事になる事と思います,ご協力,お力添えをいただければ,と思っております。

私事ですが,過日,長男の高校の卒業式に出席しました。厳かな式の後,教室ごとに分かれて最 後の会合が開かれました。生徒達から一言,同級 生や両親や家族への挨拶を,皆の前で一人一人教 壇に立って話をしていく流れでした。生徒全員の 挨拶が終了して最後に締めとして,いつも笑顔で 明るく丁寧に接してくれている女性の担任の先生 が,厳しい面持ちに変わり少し声高に話されまし た。「いいか,お前たち,色々10代で親御さん達 とも衝突した事もあったかもしれない,しかし真 剣にぶつかって注意してくれるのは親しかいない んだからな!」と言われたのです。その迫力に少 し驚き感動もしましたが,その時に挨拶で感謝を 述べてくれた長男の事も考えたのですが,すぐに 自分が受け持った,或いは現在受け持っている被 虐待のお子さん達の事を想像してしまいました。 彼らは色々な問題行動を起こし,興奮もしたりし て此方にその攻撃性を向けてくる時があります。 そのような時は此方もひるむし逃げたくなるし, 実際,ぶつかる事を回避しようとして,主治医でありながら少しスタッフに甘えて逃げてしまう事 があるのですが,それでも彼らが大人や親に投げ かけてきたかったであろう疑問や怒りや悲しみに 対して,出来る範囲で自分が受け止めたり諭した り一緒に考えたりしながら,関与しなきゃと改め て考えさせられました。児童精神科医のある先生 の言葉を借りれば,遺伝的な要素としては約4割 程度で,他は環境要因であろう,という事が言わ れており,私自身は了解できる所が多く,すなわ ち,いくつかの問題行動にも諦めつつも,見捨て ないで環境調整を図る努力を続ける事が必要なの だろうと考えています。

自宅に戻り今までの自身の事を考えても,両親 はもちろん親族や友人や先輩や同僚の中には色々 と変な甘え方や,傷つけたりしながらもお付き合 いしてくださった方々がいて,昔も今も大変お世 話になってきた事も思い出しました。大学の部活 の先輩は非常に面倒見がよく,焼肉等ご馳走になった時も“いつもすいません,お返しは何をしたら良いですか?”と,感謝を伝えると,先輩は
「お礼はいいって。それよりな,横田,お前が上 になった時に後輩をちゃんと面倒を見てやってく れな」と言われていた言葉を思い出します。現在 の自分は若い方たちに返せているのであろうか? と思う(決して焼肉をご馳走する事ではないと思 いますが)。お世話になった方々には直接お返し ができないので,次の世代や地域に還元すべきで あろうとぼんやりと考えていました。残りの人生 で自分が伝えられる範囲で押しつけにならずに周 囲や地域へお返しが出来る事を50歳過ぎた働かな い頭で知恵を絞っていきたい,と思った催花雨の 1日でした。

 

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