協会誌巻頭言

当協会について

リモートあれこれ

公益社団法人熊本県精神科協会 理事 宮内大介

2020年はじめより,新型コロナウィルス感染症拡大により,世界中が多大な影響をうけている。人の接触を減らし,密集を避けるためいろいろなものが遠隔(リモート)に移行している。まずは各種会議(協会の理事会やこの雑誌の編集委員会など)がリモートで開催されるようになり,次いで研修や学会もリモートにて開催されるようになった。パソコンにマイク,カメラを増設したり,タブレットやスマートホンを使用すれば参加でき,設備面での負担はそこまで大きくなかったが,アプリケーションの使い方を覚えねばならないことや,アカウントやパスワードの管理のわずらわしさは増えた。感染予防以外にもメリットは大きく,会場への移動の時間がなくなり,その分時間には余裕ができた。

こうした中,通院医療においても,電話や通信情報機器を用いた診療の時限的,特例的取り扱いが厚労省より示された。これまでは,患者のなりすましや処方薬の転売などのリスクがあることや,患者の背景,生活状況の把握をしていないと適切な診療をするのも難しいため,初診からの利用はしないようにとされていた。しかし,今回のコロナ禍においては,例外的に初診での対応も容認されることになった。ただし,初診での向精神薬投薬は不可となっているので,精神科での遠隔診療初診はごくわずかであろう。

オンライン診療料ならびにオンライン医学管理料が算定可能な疾患はいくつかあり,精神科領域に関連のあるものとしては,精神科在宅管理支援管理料,てんかん指導料,認知症地域包括診療料を算定している患者などがあげられる。しかし,該当する疾患であり,なおかつ通信のシステム利用が可能な例はめったにない。そのため,電話等再診にて算定することになる。通院精神療法は算定できない。時限的,特例的取り扱い期間においては,100床未満の病院であれば,通院精神療法のかわりに特定疾患療養管理料(147点)が算定できる。

通院困難者や遠隔地,へき地の患者には遠隔診療が有用であろう。通院困難者として考えられるのは,治療への理解が得られず通院行動につながらない事例,自閉傾向が強く外出が困難な事例,強迫症状や認知機能低下等により,日常生活の行動を段取りよく遂行できず,その結果として受診のための行動を遂行できない事例などがある。精神症状のみでなく,身体的な障害も重なり,移動が困難なケースもある。従来,通院困難患者への対応としては,どうにか来院していただくか,患者宅を訪問するか,家族や介護者のみの来院で助言指導にとどめる,あるいは入院となりそのまま入院が長期化してしまうなどのパターンがあったわけだが,これからは,条件が整えばビデオ通話を通しての診察,治療が可能となり,その結果,状態が良くなって日常生活を送りやすくなる方が出てくる。しかし,そのためのシステムを利用するにはスマートホンやタブレットなどのデバイスを用いた安定した通信を行う必要があるが,治療対象となる精神障害者や高齢者のほとんどはこれを実行するのはなかなか難しく,ICTに詳しい誰かの支援が必要となる。また,通院精神療法の算定ができず,診療報酬としては下がってしまうし,支払いをクレジットカード決済や振り込みに変えたり,処方箋を郵送するなど手間もあり,治療者側のメリットはあまり大きくない。あくまで困っている患者さんのためにという利用となろう。

やはり対面での診療が一番ではあるが,新しい生活様式など世の中の変化に対応していくためには,遠隔診療もうまく併用していきたいものである。 今後もリモートでの様々な活動が拡大してくことは間違いない。通信機器の適切な使用,情報セキュリティの管理などに気を付けながら対応していかねばならない。

 

 

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